六波羅蜜って何?
昨日の記事に向けて、お彼岸のお勉強をしていく中で 何度も出てきた単語。
六波羅蜜(ろくはらみつ)。
わたしのような初心者にとっては、日本史の授業で習ったきりの単語です。
最近は、東京国立博物館に六波羅蜜寺 空也上人像が展示されていると話題ですが、ほぼそこでしか聞いたことのない単語かもしれませんね。
たくさんのお彼岸についての文献に登場する単語です。せっかくなので、できるだけわかりやすく紹介できたらと思います。
六波羅蜜って何?
いきなり出てきた漢字だらけの単語、六波羅蜜。
多分お経の中に出てくるであろう、多分ありがたい単語、というイメージでしょうか。
これは、『仏さまの世界へ行くための方法6選』という意味です。
昨日、彼岸(ひがん)と此岸(しがん)のことを書きましたが、わたし達がいる苦しみ・悩みの世界から、仏さまのいる浄土(極楽)の世界へ行くために、わたし達が実践すべきことが6つあるのです。
それでは、その6つを見ていきましょう。
①布施(ふせ)
この単語は多分、聞いたことがあると思います。
お寺に支払うお金のことではありませんよ笑!
布施とは、見返りを求めずに、人に何かをほどこす(与える)ことです。
なんとなんと、『布施』の古代インド語はダーナ(दान、dāna)というそうなのですが、英語のドナー(Donor)と同じ語源なんだとか(!)ドネーションとおなじ語源を持つのが布施。そう考えると、布施の意味が感覚的にわかる気がします。
今のわたし達の生活に当てはめて考えると、優しさを与えるというところでしょうか。親切とも言えますね。
②持戒(じかい)
これは、『戒律を守ること』を意味します。戒律とは、仏教における、決まりごとのことです。五戒や十戒など色々ありますが、例えばわたしは得度をした時に十戒を授かりました。
- 殺さないこと
- 盗まないこと
- 道徳に反する異性の関係を持たない
- 嘘をつかない
- 筋の通らないことを言わない
- 乱暴な言葉を使わない
- 中身のない話をしない
- 激しい欲を持たない
- 激しい怒りをいだかない
- 間違った見方をしない 天台宗 得度式作法(抄)参照
改めて書いてみると、「ぐぬぬ…やっている…」と思う内容もちらほらあります…💧
これらを守るということは、道徳や約束を守るという意味になるでしょうか。
③忍辱(にんにく)
何かを我慢するような字面ですが、その通りです。
辱めをうける(侮辱される)ようなことがあっても、短気を起こさずにグッとこらえる。怒らない、ということです。
④精進(しょうじん)
ビジネスシーンでも『精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど…』なんて使うこともありますね。
仏教においては、雑念を払い、ひたすら仏道修行に励むこと。なんて言われますが、個人的にはシンプルに『がんばること。』でいいと思います。
もちろん、正しい方向・方法で努力することです。
⑤禅定(ぜんじょう)
『禅』という単語が入っています。以前から、座禅体験などが流行っていますが、座禅をするとどうなるでしょう?
わたし世代は、メディテーションや瞑想、ヨガ…の方が馴染みがある単語かもしれませんね。
ご想像どおり、これは『心の平穏』を意味します。
心を一つに集中させ、変なことに無駄に動揺しないことです。
⑥智慧
知恵、ではなく、智慧です。
生活の中でのスマートな考え、が知恵ですが、もっと広い視野の考え方です。
物事の全てをありのまま捉えて、正しい判断をすること。これが智慧です。
一言で表現してしまえばそれまでなのですが、わたしはまだこの一文の意味が把握しきれていません…
①~⑤を実践することで、こころ穏やかに過ごすという解釈も聞いたことがあります。
智慧について、わかりやすい文献等があれば、ぜひ教えてください。
6選のまとめ
これが、六波羅蜜です。
お彼岸との関係
では、なぜこれがお彼岸の文献にたくさん登場するのでしょうか?
これは簡単です。
六波羅蜜とは、【川のこっち岸にいるわたし達が、あっち岸の仏さまの世界に行くための方法6選】と冒頭に書きました。
この、こっち岸からあっち岸に渡ることを、古代インド語で『パーラミータ(पारमिता、Pāramitā)』と言います。この発音が、中国や朝鮮を経ている間に『波羅蜜』と記載されるようになったのです。面白いでしょ。
でも、この『波羅蜜』はあくまでも音写(音を示す単語)なので、意味を訳したら『到彼岸(とうひがん)』となるのです。
『Cat』が『キャット』になって『猫』になるみたいな感じ。
漢字を見ても、あっち岸に到達する、というそのままの意味ですね。
お彼岸にお墓参りをするのはジャパンオリジナル、と前回書きましたが、『あっち岸に行く』というコンセプトを春と秋に当てはめ、その期間中に六波羅蜜を実践しようとする考え方がうまれ、定着したのですね。
六波羅蜜、意識してみよう
堅苦しく、仏教用語としてとらえがちな『六波羅蜜』や『到彼岸』という言葉ですが、簡単な言葉でまとめて見てみると、生活をよりよくするためのHowToみたいに感じます。
子どもにもこの考え方を教えて、これからの人生の指針みたいにしたい気もしてきます。
6選全てを実践しようと毎日すると、わたしだったら3日と持たない気もするので、日曜日を小休憩にして、曜日ごとに意識してみるのもいいかもしれません。
自分なりに続けられる方法で、少し頭の片隅に入れておきたいと思います。